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淵とても頼みやはする天の川
年に一度渡るてふ瀬を

歌の意味
淵だからといって頼みにできようか。天の川は、年に一度だけ渡るという瀬なのに。
鑑賞
巻第十三 恋歌五 958

詞書「返し」
 淵だからといって頼みにできようか、天の川は年に一度渡るという瀬なのに、と詠んだ歌である。深い淵と頼まれても、天の川の二星は年に一度しか逢えないのだから当てにならないと、相手の言葉を退けている。
 前歌の第九百五十七首への返歌である。前歌の淵、天の川、瀬をそのまま受け、瀬を口にすまいと言った相手に、年に一度渡る瀬を持ち出して答えており、言葉を返して切り返している。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「淵とても」は、淵であっても、の意で、前歌の結句の「淵」を受けている。
 二句「頼みやはする」は、頼みにするだろうか、いやしない、の意で、「やは」は反語の係助詞で、連体形「する」で結んでいる。ここで句切れとなる。
 三句「天の川」は、天の川は、の意で、前歌の三句と同じ語である。
 四句「年に一度」は、一年にたった一度、の意で、七夕の逢瀬をふまえている。
 結句「渡るてふ瀬を」は、渡るという瀬なのに、の意で、「てふ」は「といふ」のつまった形である。前歌の「瀬」を受け、倒置の形で二句の理由を示している。

ふち:川の水の深い所
せ:川の浅い所、渡る所
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
おほかたは瀬とだにかけじ天の川 深き心を淵と頼まむ
次の歌
身のならむことをも知らず漕ぐ舟は 浪の心もつつまざりけり