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目も見えず涙の雨のしぐるれば
身のぬれぎぬは干るよしもなし

歌の意味
目も見えないほど涙の雨が降りしきるので、我が身に着せられた濡れ衣は乾く手立てもない。
鑑賞
巻第十三 恋歌五 955

詞書「異女に物言ふと聞きて、もとの妻の内侍のふすべ侍りければ」
 目も見えないほど涙の雨が降るので、身に着せられた濡れ衣は乾く手立てもない、と詠んだ歌である。他の女と通じているという疑いを濡れ衣と言い、無実の罪を着せられた悲しみで涙が止まらないと妻に訴えている。
 詞書によれば、別の女と親しくしていると聞いて、もとの妻である内侍が嫉妬したので詠んだ歌である。次歌の第九百五十六首は妻の中将内侍の返しで、「ぬれぎぬ」の語を受けて贈答をなしている。
 作者の「よしふるの朝臣」は小野好古である。小野篁の孫で、小野葛絃の子、小野道風の兄にあたる。藤原純友の乱で追捕使として活躍し、参議に至った。

 初句「目も見えず」は、目も見えないほど、の意で、涙のひどさを表している。
 二句「涙の雨の」は、涙の雨が、の意で、あふれる涙を雨にたとえている。
 三句「しぐるれば」は、しきりに降るので、の意で、「時雨」の動詞形で、涙が降りしきることを表している。
 四句「身のぬれぎぬは」は、我が身の濡れた衣は、の意で、「ぬれぎぬ」に雨に濡れた衣と無実の罪の意を掛けている。
 結句「干るよしもなし」は、乾く手立てもない、の意である。

しぐる:時雨が降る。涙がしきりに落ちることにもいう
ぬれぎぬ:雨や涙に「濡れた衣」と、無実の罪の意を掛ける
ふすぶ:嫉妬する、すねる
作者
小野好古
出典
後撰和歌集
前の歌
笛竹の本のふるねは変はるとも おのがよよにはならずもあらなん
次の歌
憎からぬ人の着せけんぬれぎぬは おもひにあへず今乾きなん