古典和歌stream

吹く風によその紅葉は散りくれど
君が常磐の影ぞのどけき

歌の意味
吹く風によその紅葉は散ってくるけれども、あなたの常緑の木陰はのどかで穏やかなことだ。
鑑賞
巻第五 賀歌 282

詞書「一条摂政中将に侍りける時、父の大臣の五十の賀し侍りける屏風に」
 風によその木々の紅葉は散っていくが、君の常緑の木陰はいつまでものどかだと詠む歌である。散る紅葉と変わらぬ常磐木とを対比させ、時の移ろいにも揺るがない主の繁栄を称えている。詞書によれば、一条摂政藤原伊尹が中将であった時、父の大臣藤原師輔の五十の賀を催した屏風に添えた歌である。
 作者の「小野好古朝臣」は、小野篁の孫で、参議に至った。藤原純友の乱の追捕にあたったことで知られる。

 初句「吹く風に」は、吹く風に、の意である。
 二句「よその紅葉は」は、ほかの木の紅葉は、の意である。
 三句「散りくれど」は、散ってくるけれども、の意で、「ど」は逆接の接続助詞である。
 四句「君が常磐の」は、あなたの常緑の木の、の意で、主の変わらぬ繁栄をたとえている。本巻の第二百七十三首の「常磐堅磐」とも通じている。
 結句「影ぞのどけき」は、木陰がのどかである、の意で、「影」には主の庇護の意が込められている。係助詞「ぞ」を受けて連体形「のどけき」で結ぶ。

ときは:常に緑の色を変えないこと。常緑の木
かげ:木陰。転じて人の庇護
作者
小野好古
出典
拾遺和歌集
前の歌
くらゐ山峰まで突ける杖なれど 今万代の坂のためなり
次の歌
万代もなほこそ飽かね君がため 思ふ心の限りなければ