万代もなほこそ飽かね君がため
思ふ心の限りなければ
- 歌の意味
-
万代でもなお満ち足りない。あなたのためを思う心には限りがないので。
- 鑑賞
-
巻第五 賀歌 283
詞書「権中納言敦忠、母の賀し侍りけるに」
万代の長寿でさえまだ物足りない、あなたを思う心には限りがないのだからと詠む歌である。祝いの定型である万代を越えるほどの思いの深さによって、母を敬う子の心に寄り添って祝っている。詞書によれば、権中納言藤原敦忠が母の賀を催した時の歌である。敦忠は藤原時平の子である。
作者の「源公忠朝臣」は、光孝天皇の皇子である源国紀の子で、右大弁に至った。醍醐天皇に近く仕え、三十六歌仙に数えられる。
初句「万代も」は、万代であっても、の意である。
二句「なほこそ飽かね」は、なお満足できない、の意で、係助詞「こそ」を受けて打消の助動詞「ず」の已然形「ね」で結ぶ。ここで句切れとなる。本巻の第二百七十七首の「ほども飽かねば」と同じく、長寿の定型に飽き足りない心を詠んでいる。
三句「君がため」は、あなたのために、の意である。
四句「思ふ心の」は、思う心の、の意である。次歌の第二百八十四首も同じ「思ふ心の」を四句に置いている。
結句「限りなければ」は、限りがないので、の意で、倒置によって理由を後に示している。本巻の第二百七十首の「限りなき身」とも響き合っている。
あく:満ち足りる。満足する
- 作者
-
源公忠
- 出典
-
拾遺和歌集
- 前の歌
-
吹く風によその紅葉は散りくれど 君が常磐の影ぞのどけき
- 次の歌
-
大空に群れたる鶴のさしながら 思ふ心のありげなるかな