いとせめて恋しきたびの唐衣
ほどなくかへす人もあらなん
- 歌の意味
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ひどく恋しく思われるこの旅の唐衣を、ほどなく裏返して寝るように、あなたをすぐに都へ帰してくれる人がいてほしい。
- 鑑賞
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巻第十九 離別歌 1316
詞書「あひ知りて侍りける女の、人の国にまかりけるにつかはしける」
ひどく恋しい旅の唐衣を、ほどなく返してくれる人がいてほしい、と詠んだ歌である。地方へ下る親しい女に、唐衣を返す意に帰す意を掛け、すぐにでも都へ帰ってきてほしいと願っている。
詞書によれば、親しくしていた女が地方の国へ下る時に送った歌である。次歌はその女の返しで、二首は贈答の一組となっている。
作者の「公忠朝臣」は源公忠である。光孝天皇の孫で、右大弁に至った。三十六歌仙の一人で、香を調合する名手としても知られた。
初句「いとせめて」は、ひどく切実に、の意である。
二句「恋しきたびの」の「たび」は、「旅」と「度」を掛けた掛詞で、恋しく思う旅、恋しく思うたびごとに、の意を重ねている。
三句「唐衣」は、美しい衣の意で、旅立つ女をたとえている。
四句「ほどなくかへす」の「かへす」は、衣を「返す」と、都へ「帰す」を掛けた掛詞である。衣を裏返して寝ると恋しい人を夢に見るという俗信を踏まえている。「返す」は「唐衣」の縁語である。
結句「人もあらなん」は、人がいてほしい、の意で、「なん」は他にあつらえ望む終助詞である。
からころも:美しい衣、唐風の衣
たび:「旅」の意と、「度」を掛ける
かへす:衣を「返す」意と、都へ「帰す」意を掛ける
- 作者
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源公忠
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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初雁の我も空なるほどなれば 君も物憂き旅にやあるらん
- 次の歌
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唐衣たつ日をよそに聞く人は かへすばかりのほども恋しを