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玉くしげふたとせ逢はぬ君がみを
あけながらやはあらむと思ひし

歌の意味
二年会っていないあなたの身が、緋の衣の五位のままでいようとは思っただろうか、いや思いもしなかった。
鑑賞
巻第十五 雑歌一 1123

詞書「小野好古朝臣、西の国の討手の使にまかりて二年といふ年、四位には必ずまかりなるべかりけるを、さもあらずなりにければ、かかる事にしもさされにける事のやすからぬよしを憂へ送りて侍りける文の、返事の裏に書きつけてつかはしける」
 二年会わないあなたの身が、緋の衣の五位のままでいようとは思いもしなかった、と詠んだ歌である。玉くしげの縁語で「ふた」「み」「あけ」を連ね、手柄を立てながら四位に進めなかった好古の不運に同情している。
 詞書によれば、小野好古が西国の追討使として下って二年目に、必ず四位になるはずであったのにそうならず、このような役目に差し向けられたことへの不満を訴えて送ってきた手紙の、返事の裏に書きつけて送った歌である。好古の西国下向は、藤原純友の乱の追討のためであった。次歌に好古の返しがあり、贈答となっている。
 作者の源公忠は、光孝天皇の孫で、右大弁に至った。三十六歌仙の一人で、香の調合や鷹狩にも通じた。

 初句「玉くしげ」は、櫛を入れる美しい箱で、「ふた」にかかる枕詞である。
 二句「ふたとせ逢はぬ」は、二年会わない、の意で、「ふた」に箱の「蓋」と「二」を掛けている。
 三句「君がみを」は、あなたの身を、の意で、「み」に箱の「身」と、好古の「身」を掛けている。
 四句「あけながらやは」は、緋の衣のままで、の意で、「あけ」に箱を「開け」る意と、五位の袍の色の「緋」を掛けている。「やは」は反語を表す。本巻の第千百十六首にも位の色としての「あけ」が詠まれ、次歌の初句がこの語を受けている。
 結句「あらむと思ひし」は、いるだろうと思ったか、の意で、四句の「やは」を受けて連体形「し」で結び、思いもしなかった意となる。

たまくしげ:櫛などを入れる美しい箱。「ふた」「み」「あく」などにかかる枕詞
ふた:箱の蓋の意と、二の意を掛ける
み:箱の身の意と、我が身の意を掛ける
あけ:箱を開ける意と、五位の袍の色の緋を掛ける
うて:賊を討つために遣わされる者。討手
作者
源公忠
出典
後撰和歌集
前の歌
隔てける人の心のうきはしを 危ふきまでもふみ見つるかな
次の歌
あけながら年ふることは玉くしげ みのいたづらになればなりけり