筑紫なる思ひそめ河渡りなば
水やまさらんよどむ時なく
- 歌の意味
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筑紫にある染川の名のように、思いはじめたこの恋の川を渡ってしまったならば、水かさはいっそう増すだろうか、淀む時もなく。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌六 1046
詞書「女のもとにつかはしける」
筑紫の思ひ染め河を渡ったならば、水かさは淀む時もなく増していくだろう、と詠んだ歌である。筑前国の歌枕の染川に「思ひ初め」を掛け、思いはじめた恋を渡りきったら、思いはさらに増していくだろうと詠んでいる。
詞書によれば、女のもとに送った歌で、次歌の第千四十七首に女の返しが置かれている。本巻の第九百九十四首、第九百九十五首の「よど」と同じく、水のとどこおりに寄せて恋を詠んでいる。
作者の「藤原さねたた」は藤原真忠とされるが、詳しい伝は未詳である。
初句「筑紫なる」は、筑紫にある、の意で、「なる」は存在を表す。次歌の四句「心づくし」がこれを受けている。
二句「思ひそめ河」は、筑前国の染川のことで、「そめ」に恋を「思ひ初め」る意と地名の「染川」を掛けている。
三句「渡りなば」は、渡ってしまったならば、の意で、恋を遂げることを川を渡ることにたとえている。
四句「水やまさらん」は、水かさが増すだろうか、の意で、「や」は疑問の係助詞で、連体形「ん」で結ぶ係り結びとなっている。思いが増すことをたとえている。
結句「よどむ時なく」は、とどこおる時もなく、の意で、四句へ返る倒置となっている。本巻の第九百九十四首、第九百九十五首の「よど」と響き合っている。
そめかは:筑前国の染川。「思ひ初め」を掛ける
そむ:しはじめる
- 作者
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藤原真忠
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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間近くてつらきを見るはうけれども うきはものかは恋しきよりは
- 次の歌
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渡りてはあだになるてふ染河の 心づくしになりもこそすれ