小山田のおどろかしにも来ざりしを
いとひたぶるに逃げし君かな
- 歌の意味
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小さな山田の鳥おどしのように驚かしに来たわけでもないのに、それほどひたすらに逃げてしまったあなたであることよ。
- 鑑賞
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巻第十五 雑歌一 1108
詞書「人の娘に源かねきが住み侍りけるを、女の母聞き侍りていみじう制し侍りければ、忍びたる方にて語らひけるあひだに、母知らずして俄に行きければ、かねき逃げてまかりにければ、つかはしける」
山田の鳥おどしのように驚かしに来たわけでもないのに、ひたすらに逃げてしまったあなただこと、と詠んだ歌である。娘のもとから慌てて逃げた男を、鳴子に驚いて飛び立つ鳥になぞらえ、田の縁語を重ねてからかっている。
詞書によれば、源かねきが人の娘のもとに通っていたが、娘の母が聞きつけてひどく禁じたので、人目につかない所で語らっていたところ、母が知らずに急に行ったため、かねきが逃げていってしまったので、母が送った歌である。
作者は娘の母で、名は伝わらない。源かねきも詳しい伝は未詳である。
初句「小山田の」は、山あいの小さな田の、の意で、「を」は接頭語である。
二句「おどろかしにも」は、鳥おどしで驚かしに、の意で、「おどろかし」は田の鳥を追う鳴子などをいう。母が驚かすつもりで来たのではないことをいう。
三句「来ざりしを」は、来たわけではなかったのに、の意で、「を」は逆接を表す。
四句「いとひたぶるに」は、たいそうひたすらに、の意で、「ひた」に田の鳥を追う鳴子の「引板」を響かせ、小山田の縁語としている。
結句「逃げし君かな」は、逃げてしまったあなたであることよ、の意で、「かな」は詠嘆を表す。
をやまだ:山あいの小さな田
おどろかし:田畑の鳥獣を驚かして追い払う鳴子などの仕掛け
ひた:田の鳥を追う鳴子の引板。「ひたぶる」に響かせる
- 出典
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