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いかでかの年切りもせぬ種もがな
荒れたる宿に植ゑて見るべく

歌の意味
どうにかして、あの年切りもしない種がほしいものだ。荒れてしまった我が家に植えて見ることができるように。
鑑賞
巻第十五 雑歌一 1109

詞書「三条右大臣身まかりて明くる年の春、大臣召しありと聞きて斎宮のみこにつかはしける」
 どうにかして、あの年切りもしない種がほしい、荒れた家に植えて見られるように、と詠んだ歌である。父を亡くして寂れた家に、絶えることなく花を咲かせる種を植えたいと、家の再び栄えることを願う心を託している。
 詞書によれば、三条右大臣藤原定方が亡くなった翌年の春、大臣の任命があると聞いて、斎宮であった内親王に送った歌である。次歌に斎宮のみこの返しがあり、贈答となっている。
 作者の「むすめの女御」は藤原能子である。三条右大臣藤原定方の娘で、醍醐天皇の女御となった。

 初句「いかでかの」は、どうにかして、あの、の意で、「いかで」は願望を強める語、「かの」は三句の種を指している。
 二句「年切りもせぬ」は、年切りもしない、の意で、毎年絶えることなく花や実をつける意である。本巻の第千七十七首にも「年切り」の語が詠まれ、次歌の三句がこの語を受けている。
 三句「種もがな」は、種があればよいのに、の意で、「もがな」は願望を表す。ここで句切れとなる。
 四句「荒れたる宿に」は、荒れてしまった家に、の意で、父を亡くして寂れた家をいう。
 結句「植ゑて見るべく」は、植えて見ることができるように、の意である。

としきり:果樹が年によって花や実をつけないこと
だいじんめし:大臣を任命する儀式。大臣召
さいぐう:伊勢神宮に奉仕した未婚の皇女
作者
藤原能子
出典
後撰和歌集
前の歌
小山田のおどろかしにも来ざりしを いとひたぶるに逃げし君かな
次の歌
春ごとに行きてのみ見む年切りも せずといふ種は生ひぬとか聞く