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春ごとに行きてのみ見む年切りも
せずといふ種は生ひぬとか聞く

歌の意味
春が来るたびに、ただ出かけていって見ることにしよう。年切りもしないという種は、もう生えたと聞いているので。
鑑賞
巻第十五 雑歌一 1110

詞書「かの女御、左のおほいまうちきみに逢ひにけりと聞きてつかはしける」
 年切りもしないという種はもう生えたと聞くので、春ごとに出かけて見ることにしよう、と詠んだ歌である。前歌の「年切りもせぬ種」を受け、女御が左大臣の妻となったことを、願っていた種が芽生えたと祝っている。
 詞書によれば、前歌の女御が、左大臣藤原実頼と結ばれたと聞いて送った歌である。
 作者の「斎宮のみこ」は柔子内親王とされる。宇多天皇の皇女で、醍醐天皇の時代に長く伊勢の斎宮を務めた。

 初句「春ごとに」は、春が来るたびに、の意で、花の季節を思わせている。
 二句「行きてのみ見む」は、ただ出かけていって見よう、の意で、「む」は意志を表す。ここで句切れとなる。
 三句「年切りも」は、年切りも、の意で、前歌の二句「年切りもせぬ」を受けている。
 四句「せずといふ種は」は、しないという種は、の意で、前歌の三句「種もがな」に応じている。
 結句「生ひぬとか聞く」は、生えたと聞いている、の意で、「ぬ」は完了、「とか」は伝え聞いた内容を示す。女御が実頼と結ばれたことを、種が芽生えたとたとえている。

おふ:生える。育つ
としきり:果樹が年によって花や実をつけないこと
作者
柔子内親王
出典
後撰和歌集
前の歌
いかでかの年切りもせぬ種もがな 荒れたる宿に植ゑて見るべく
次の歌
思ひきや君が衣を脱ぎかへて 濃き紫の色を着むとは