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思ひきや君が衣を脱ぎかへて
濃き紫の色を着むとは

歌の意味
思っただろうか。あなたがこれまでの衣を脱ぎ替えて、濃い紫の色の衣を着ることになろうとは。
鑑賞
巻第十五 雑歌一 1111

詞書「庶明朝臣中納言になり侍りける時、上の衣つかはすとて」
 あなたが衣を脱ぎ替えて濃い紫の衣を着るとは思っただろうか、と詠んだ歌である。中納言に昇進して高い位を示す濃紫の袍を着る身となった庶明を、袍を贈って祝っている。
 詞書によれば、源庶明が中納言になった時、袍を贈るときに添えた歌である。次歌に庶明の返しがあり、贈答となっている。
 作者の「右大臣」は藤原師輔である。関白藤原忠平の次男で、右大臣に至った。娘の安子が村上天皇の中宮となり、子孫は摂関家として栄えた。九条殿と呼ばれた。

 初句「思ひきや」は、思っただろうか、いや思いもしなかった、の意で、「き」は過去、「や」は反語を表す。ここで句切れとなる倒置の形で、結句の「とは」に続いている。
 二句「君が衣を」は、あなたの衣を、の意である。
 三句「脱ぎかへて」は、脱いで着替えて、の意で、これまでの位の衣から着替えることをいう。
 四句「濃き紫の」は、濃い紫の、の意で、高い位を示す袍の色である。
 結句「色を着むとは」は、その色の衣を着ようとは、の意で、「む」は推量を表す。初句の「思ひきや」に返り、昇進の喜びを強めている。

うへのきぬ:束帯の上着。袍
ぬぎかふ:衣を脱いで着替える
作者
藤原師輔
出典
後撰和歌集
前の歌
春ごとに行きてのみ見む年切りも せずといふ種は生ひぬとか聞く
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いにしへも契りてけりなうちはぶき 飛び立ちぬべし天の羽衣