種もなき花だに散らぬ宿もあるを
などか形見の子だになからむ
- 歌の意味
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種もない花でさえ散らずに残っている家もあるのに、どうして亡き人の形見の子さえないのだろうか。
- 鑑賞
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巻第二十 慶賀歌 1392
詞書「女四の親王の文の侍りけるに、書きつけて内侍のかみに」
種もない花さえ散らずに残る家もあるのに、どうして形見の子さえないのか、と詠んだ歌である。亡き妻の手紙が残っているのを見て、種のない花さえ散らずに残っているのに、妻には形見となる子さえ残らなかったと嘆いているとみられる。
詞書によれば、亡き女四の宮の手紙が残っていたので、それに書きつけて尚侍に送った歌である。女四の宮は、醍醐天皇の皇女で作者の妻となった勤子内親王を指すとみられる。次歌は尚侍の返しで、二首は贈答の一組となっている。
作者の「右大臣」は藤原師輔である。藤原忠平の次男で、右大臣に至り、九条殿と呼ばれた。娘の安子は村上天皇の中宮となった。
初句「種もなき」は、種もない、の意で、次歌の二句「種ならねども」に受けられている。
二句「花だに散らぬ」は、花でさえ散らずにいる、の意で、残された手紙を花にたとえているとみられる。
三句「宿もあるを」は、家もあるのに、の意で、「を」は逆接を表す。
四句「などか形見の」は、どうして形見の、の意である。
結句「子だになからむ」は、子さえないのだろうか、の意で、四句の「か」を受けて連体形「む」で結ぶ係り結びとなっている。「種」「花」「子」は縁のある語として並べられている。
かたみ:亡き人を思い出すよすがとなるもの
ないしのかみ:内侍司の長官、尚侍
- 作者
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藤原師輔
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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別れにしほどを果てとも思ほえず 恋しきことの限りなければ
- 次の歌
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結びおきし種ならねども見るからに いとどしのぶの草を摘むかな