おもひには我こそ入りてまどはるれ
あやなく君や涼しかるべき
- 歌の意味
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恋の思いの火の中に、私こそが入って迷い苦しんでいるのに、わけもなく、あなたばかりが涼しくしていてよいものだろうか。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌三 782
詞書「院の大和に扇つかはすとて」
思いの火の中で私こそ迷い苦しんでいるのに、わけもなくあなたが涼しくてよいものか、と詠んだ歌である。涼をもたらす扇を贈るにあたり、恋に焦がれる自分と平然としている相手とを、熱さと涼しさで対比している。
詞書によれば、院に仕える大和という女房に扇を送るときに添えた歌である。
作者の「右大臣」は藤原師輔である。関白藤原忠平の次男で、右大臣にまで昇った。九条右大臣とも呼ばれ、勤子内親王を妻とした。
初句「おもひには」の「おもひ」は、恋の「思ひ」と「火」を掛ける掛詞である。
二句「我こそ入りて」は、私こそが入って、の意で、「こそ」は強めの係助詞である。
三句「まどはるれ」は、迷い苦しんでいる、の意で、二句の「こそ」を受けて已然形で結ぶ係り結びとなっている。ここで句切れとなる。
四句「あやなく君や」は、わけもなくあなたは、の意で、「や」は反語の係助詞である。二句の「我」と「君」が対をなしている。
結句「涼しかるべき」は、涼しくしていてよいものか、の意で、四句の「や」を受けて連体形「べき」で結ぶ係り結びとなっている。贈る扇の涼しさと、初句の「火」の熱さが対をなしている。
おもひ:恋の「思ひ」の意と、「火」の意を掛ける
まどふ:迷う、思い乱れる
- 作者
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藤原師輔
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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ちはやぶる神引きかけて誓ひてし こともゆゆしくあらがふなゆめ
- 次の歌
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あらたまの年も越えぬる松山の 波の心はいかがなるらむ