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隠れ沼に住む鴛鴦の声絶えず
なけどかひなきものにぞありける

歌の意味
人目につかない沼に住む鴛鴦が絶えず鳴くように、私も声を絶やさず泣いているけれど、何の甲斐もないことであった。
鑑賞
巻第十一 恋歌三 775

詞書「人のもとにつかはしける」
 隠れ沼に住む鴛鴦が絶えず鳴くように泣いても、甲斐のないことであった、と詠んだ歌である。人知れぬ沼でつがいを恋うて鳴く鴛鴦に自分を重ね、ひそかに泣き続けても届かない恋の嘆きを述べている。
 詞書によれば、ある人のもとへ送った歌である。
 作者の「右大臣」は藤原師輔である。関白藤原忠平の次男で、右大臣にまで昇った。九条右大臣とも呼ばれ、勤子内親王を妻とした。

 初句「隠れ沼に」は、草などに覆われて人目につかない沼に、の意で、人知れぬ恋をたとえている。
 二句「住む鴛鴦の」は、住む鴛鴦の、の意である。鴛鴦はつがいの仲がよい鳥とされた。
 三句「声絶えず」は、声を絶やさず、の意である。
 四句「なけどかひなき」の「なけ」は、鳥が「鳴け」と人が「泣け」を掛ける掛詞である。
 結句「ものにぞありける」は、ことであった、の意で、「ぞ」は強めの係助詞であり、連体形「ける」で結ぶ係り結びとなっている。

かくれぬ:草などに覆われて人目につかない沼
をしどり:鴛鴦。雌雄の仲がよいとされる水鳥
なく:鳥が「鳴く」意と、人が「泣く」意を掛ける
作者
藤原師輔
出典
後撰和歌集
前の歌
葛城や久米路の橋にあらばこそ 思ふ心を中空にせめ
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筑波嶺の峰より落つるみなの川 恋ぞつもりて淵となりける