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露ならぬわが身と思へど秋の夜を
かくこそ明かせおきゐながらに

歌の意味
露ではないわが身と思うけれど、秋の夜をこのように明かしている。露が置いたままのように、起きたままで。
鑑賞
巻第六 秋歌中 292

詞書「題しらず」
 露ではないわが身と思うけれども、秋の夜を、露が置いたままでいるように、起きたままで明かしていると詠んだ歌である。眠れずに夜を明かす自分を、夜通し草葉に置く露に重ねている。
 本巻の第二百九十首から第二百九十二首までは、夜を明かす身を露に重ねる歌が三首並んでいる。本歌はその三首目である。
 作者の「右大臣」は藤原師輔である。関白藤原忠平の次男で、後撰和歌集が撰ばれたころ右大臣であった。九条殿と呼ばれ、娘の安子は村上天皇の中宮となった。

 初句「露ならぬ」は、露ではない、の意で、本巻の第二百九十首の「露はわが身の」に対し、露ではない身と打ち消している。
 二句「わが身と思へど」の「ど」は逆接の確定条件で、わが身と思うけれど、の意である。
 三句「秋の夜を」は、秋の夜を、の意で、本巻の第二百九十首の初句と同じ語である。
 四句「かくこそ明かせ」は、このように明かしている、の意で、係助詞「こそ」と已然形「明かせ」が係り結びをなす。ここで句切れとなる。
 結句「おきゐながらに」の「おき」は、露が「置く」意と、人が「起く」意を掛けた掛詞で、起きたままで、の意である。四句と倒置の関係にある。本巻の第二百八十五首の「おきゐつつ」と同じ掛詞である。

おきゐる:露が「置き居る」意と、人が「起き居る」意を掛ける
作者
藤原師輔
出典
後撰和歌集
前の歌
おほかたに置く白露も今よりは 心してこそ見るべかりけれ
次の歌
白露のおくにあまたの声すれば 花の色々ありと知らなん