み山より響き聞こゆるひぐらしの
声を恋しみ今も消ぬべし
- 歌の意味
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奥深い山から響いて聞こえてくるひぐらしの声が恋しくて、今にも消え入ってしまいそうだ。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌二 1127
詞書「前中宮宣旨、贈太政大臣の家よりまかり出でてあるに、かの家に事に触れてひぐらしといふ事なむ侍りける」
奥深い山から響いてくるひぐらしの声が恋しくて、今にも消え入りそうだ、と詠んだ歌である。去ってきた家でよく口にされた「ひぐらし」を山の蝉の声に見立て、その家とそこにいる人を恋しく思う気持ちを伝えている。
詞書によれば、前中宮の宣旨が贈太政大臣藤原時平の家から退出していた時、その家では何かにつけて「ひぐらし」ということがあったので詠んだ歌である。「ひぐらし」が何を指すかは明らかでないが、時平の家を思い起こさせる言葉であったとみられる。次歌に時平の返しがあり、贈答となっている。
作者の「宣旨」は、詞書にいう前中宮に仕えた宣旨で、中宮の命を伝える役の女房である。どの中宮かを含め、名や伝は未詳である。
初句「み山より」は、奥深い山から、の意で、「み」は美称の接頭語である。次歌の四句にも「み山」が詠まれている。
二句「響き聞こゆる」は、響いて聞こえてくる、の意である。
三句「ひぐらしの」は、蝉の一種のひぐらしの、の意で、詞書の「ひぐらし」という言葉を受けている。次歌の初句もこの語で始まっている。
四句「声を恋しみ」は、声が恋しいので、の意で、「〜を〜み」は原因、理由を表す。次歌の二句がこの句をそのまま受けている。
結句「今も消ぬべし」は、今にも消えてしまいそうだ、の意で、「消」は消え入る意、「ぬべし」は強い推量を表す。次歌の三句「消ぬべくは」に受け継がれている。
ひぐらし:蝉の一種。カナカナと鳴く
く:消える。消え入る
せんじ:天皇や中宮の命を伝える役の女房
- 作者
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宣旨
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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逢坂のゆふつけに鳴く鳥の音を 聞きとがめずぞ行き過ぎにける
- 次の歌
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ひぐらしの声を恋しみ消ぬべくは み山通りにはやも来ねかし