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誓はれし賀茂の河原に駒とめて
しばし水飼へ影をだに見む

歌の意味
かつて誓いを立てられたこの賀茂の河原に馬をとめて、しばらく水を飲ませてください。せめてあなたの姿だけでも見たい。
鑑賞
巻第十六 雑歌二 1129

詞書「河原に出でて祓へし侍りけるに、大臣も出であひて侍りければ」
 誓いを立てられた賀茂の河原に馬をとめて、しばらく水を飲ませてほしい、せめて姿だけでも見たい、と詠んだ歌である。祓の場に居合わせた大臣に、かつての誓いを思い起こさせつつ、ひと目でも姿を見たいという思いを訴えている。
 詞書によれば、河原に出て祓をしていた時、大臣も出てきて居合わせたので詠んだ歌である。大臣は敦忠の父藤原時平を指すとみられる。下の句は、古今和歌集の神遊びの歌「ささのくま檜隈川に駒とめてしばし水かへ影をだに見む」と同じで、古歌の句をそのまま用いて思いを伝えている。
 作者の「敦忠朝臣の母」は在原棟梁の娘である。公卿補任によるもので、在原業平の孫にあたり、藤原時平との間に敦忠をもうけた。尊卑分脈は本康親王の娘廉子とする別の伝えを記している。

 初句「誓はれし」は、誓いを立てられた、の意で、「れ」は尊敬または受身の助動詞「る」の連用形、「し」は過去の助動詞「き」の連体形である。賀茂の神にかけて交わした誓いを思わせている。
 二句「賀茂の河原に」は、賀茂川の河原に、の意で、祓の行われた場所である。
 三句「駒とめて」は、馬をとめて、の意である。
 四句「しばし水飼へ」は、しばらく馬に水を飲ませてください、の意で、「飼へ」は命令形である。古今和歌集の古歌と同じ句である。
 結句「影をだに見む」は、せめて姿だけでも見たい、の意で、「だに」は最小限の願いを表し、「む」は意志を表す。水に映る姿を見たいという意も含んでいる。

みづかふ:馬などに水を飲ませる
かげ:姿。水に映った姿
はらへ:神に祈って罪や穢れを除く行事
こま:馬
作者
在原棟梁女
出典
後撰和歌集
前の歌
ひぐらしの声を恋しみ消ぬべくは み山通りにはやも来ねかし
次の歌
我が乗りし事をうしとや消えにけん 草葉にかかる露の命は