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かづき出でし沖のもくづを忘れずは
底のみるめを我に刈らせよ

歌の意味
潜って取り出した沖の藻屑のことを忘れないというのなら、海の底の海松布を私に刈らせておくれ。あなたに逢う機会を私にください。
鑑賞
巻第十六 雑歌二 1149

詞書「返し」
 潜って取ってきた沖の藻屑を忘れないなら、底の海松布を私に刈らせてほしい、と詠んだ歌である。前歌の藻屑の比喩を受け、「みるめ」に海松布と逢う機会を掛けて、恩を忘れないのなら逢う機会をくれと、戯れに恋を仕掛けている。
 前歌の童女の歌に対する返しである。
 作者の「輔臣朝臣」は、詞書に蔵人として見える人であるが、姓や詳しい伝は未詳である。

 初句「かづき出でし」は、潜って取り出した、の意で、前歌の三句「かづきてし」を受けている。
 二句「沖のもくづを」は、沖の藻屑を、の意で、前歌の四句と同じ句である。
 三句「忘れずは」は、忘れないのなら、の意で、前歌の結句「いつか忘れん」に応じている。
 四句「底のみるめを」は、海の底の海松布を、の意で、「みるめ」に海藻の海松布と、逢う機会の「見る目」を掛けている。
 結句「我に刈らせよ」は、私に刈らせておくれ、の意で、「よ」は命令を表す。逢う機会を与えてほしいという願いをこめている。

みるめ:海藻の海松布の意と、逢う機会の意の「見る目」を掛ける
かる:海藻などを刈り取る
かづく:水に潜って物を取る
作者
輔臣
出典
後撰和歌集
前の歌
立ち騒ぐ浪間を分けてかづきてし 沖のもくづをいつか忘れん
次の歌
限りなく思ふ心は筑波嶺の このもやいかがあらむとすらむ