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直き木に曲がれる枝もあるものを
毛を吹き疵を言ふがわりなさ

歌の意味
まっすぐな木にも曲がった枝はあるものなのに、毛を吹き分けてまで小さな疵をあげつらうのは、なんと理不尽なことか。
鑑賞
巻第十六 雑歌二 1155

詞書「いたく事好むよしを時の人言ふと聞きて」
 まっすぐな木にも曲がった枝はあるのに、毛を吹き分けて疵を探すように欠点をあげつらうのは理不尽だ、と詠んだ歌である。風流事を好みすぎると世間に言われたことに対し、誰にでも欠点はあるものだと、わずかな過ちを責め立てる人々の心なさを訴えている。
 詞書によれば、ひどく物好きであると当時の人が言っていると聞いて詠んだ歌である。「毛を吹き疵を言ふ」は、毛を吹き分けて隠れた小さな疵を探すという中国の韓非子の言葉に基づく。次歌は嵯峨天皇の后の歌で、嵯峨天皇にゆかりのある女性の歌が二首続いている。
 作者の高津内親王は、桓武天皇の皇女で、嵯峨天皇の妃となったが、のちに妃の位を廃されたと伝えられる。

 初句「直き木に」は、まっすぐな木にも、の意で、字余りとなっている。
 二句「曲がれる枝も」は、曲がった枝も、の意で、「る」は存続の助動詞「り」の連体形である。
 三句「あるものを」は、あるものなのに、の意で、「ものを」は逆接を表す。ここで句切れとなる。
 四句「毛を吹き疵を」は、毛を吹き分けて疵を、の意で、ことさらに他人の小さな欠点を探し出すたとえである。
 結句「言ふがわりなさ」は、言いたてることの理不尽さよ、の意で、名詞で結ぶ体言止めとなっている。

けをふく:毛を吹き分けて隠れた疵を探す。ことさらに欠点を探すたとえ
わりなさ:道理に合わないこと。理不尽さ
ことこのむ:風流事や物珍しいことを好む
作者
高津内親王
出典
後撰和歌集
前の歌
人心いさやしら浪高ければ 寄らむ渚ぞかねて悲しき
次の歌
移ろはぬ心の深くありければ ここら散る花春にあへること