移ろはぬ心の深くありければ
ここら散る花春にあへること
- 歌の意味
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移ろうことのない心が深くあったので、これほど多く散る花も、また春にめぐり合うことよ。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌二 1156
詞書「帝に奉りたまひける」
移ろわない心が深くあったので、多く散る花も春にめぐり合うことだ、と詠んだ歌である。散りやすい花のような身でも、帝の変わらない深い心によって春の恵みにあずかれると、寵愛への感謝を花と春に託して帝に捧げている。
詞書によれば、帝すなわち嵯峨天皇に奉った歌である。前歌が世の非難を嘆くのに対し、本歌は帝の寵愛を喜んでおり、嵯峨天皇をめぐる二人の女性の歌が対照をなしている。
作者の「嵯峨后」は橘嘉智子である。嵯峨天皇の皇后で、仁明天皇の母にあたる。檀林寺を建てたことから檀林皇后とも呼ばれた。
初句「移ろはぬ」は、移り変わらない、の意で、色の変わらない心をいう。
二句「心の深く」は、心が深く、の意で、帝の変わらない深い心を指すとみられる。
三句「ありければ」は、あったので、の意で、「けれ」は過去の助動詞「けり」の已然形、「ば」は原因を表す。
四句「ここら散る花」は、これほど多く散る花も、の意で、「ここら」は数量の多いさまをいう。散りやすい花に我が身を重ねている。
結句「春にあへること」は、春にめぐり合うことよ、の意で、名詞「こと」で結んで感動を表している。春に帝の恵みをたとえている。
うつろふ:色が変わる。心が変わる
ここら:たくさん。はなはだ
- 作者
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橘嘉智子
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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直き木に曲がれる枝もあるものを 毛を吹き疵を言ふがわりなさ
- 次の歌
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玉垂れの編み目の間より吹く風の 寒くはそへて入れん思ひを