事しげししばしは立てれ宵の間に
置けらむ露は出でて払はむ
- 歌の意味
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人の噂がうるさいので、しばらくはそこに立っていてください。宵のうちに置いているでしょう露は、私が出ていって払いましょう。
- 鑑賞
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巻第十五 雑歌一 1080
詞書「まだ后になりたまはざりける時、かたはらの女御たち嫉みたまふ気色なりける時、帝御曹司に忍びて立ち寄りたまへりけるに、御対面はなくて奉れたまひける」
人の噂がうるさいので、しばらくは外に立っていてほしい、宵のうちに置いた露は私が出ていって払おう、と詠んだ歌である。ほかの女御たちの嫉みをはばかってすぐには会えない事情を伝えつつ、帝の衣に置く露を自ら払おうと、細やかな心遣いを見せている。
詞書によれば、まだ皇后になっていなかった時、そばの女御たちが嫉妬している様子だったので、帝がひそかに部屋に立ち寄った際、対面はせずに差し上げた歌である。
作者の「嵯峨后」は橘嘉智子である。嵯峨天皇の皇后で、仁明天皇の母にあたる。檀林寺を建てたことから檀林皇后とも呼ばれた。
初句「事しげし」は、人の噂がうるさい、の意で、ほかの女御たちの目をはばかる事情を示している。ここで句切れとなる。
二句「しばしは立てれ」は、しばらくは立っていなさい、の意で、「立てれ」は「立てり」の命令形である。帝に外で待ってもらうよう願っている。ここで句切れとなる。
三句「宵の間に」は、宵のうちに、の意である。
四句「置けらむ露は」は、置いているであろう露は、の意で、「ら」は存続の助動詞「り」、「む」は推量の助動詞である。帝の衣に置く夜露を思いやっている。
結句「出でて払はむ」は、出ていって払いましょう、の意で、「む」は意志を表す。しばらく待ってもらったのち、自ら出ていって迎えることを約している。
みざうし:宮中で女御などに与えられた部屋
ことしげし:人の噂などがうるさい
- 作者
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橘嘉智子
- 出典
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後撰和歌集
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世とともに峰へ麓へおりのぼり 行く雲の身は我にぞありける
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照る月をまさきの綱に縒りかけて 飽かず別るる人をつながん