世とともに峰へ麓へおりのぼり
行く雲の身は我にぞありける
- 歌の意味
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いつまでも峰へ麓へと下ったり上ったりして流れていく雲のような身の上は、ほかならぬ私であったことだ。
- 鑑賞
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巻第十五 雑歌一 1079
詞書「外吏にしばしばまかり歩きて、殿上下りて侍りける時、兼輔の朝臣のもとに送り侍りける」
いつも峰へ麓へと下ったり上ったりして流れていく雲の身は、まさに私のことだった、と詠んだ歌である。地方官と殿上の間を行き来して定まらない身の上を、山を上り下りする雲にたとえて嘆いている。
詞書によれば、地方官としてたびたび地方に下り、殿上の籍を離れていた時に、藤原兼輔のもとに送った歌である。雲の上り下りに、殿上を下り、また昇る身の上を重ねている。
作者の平中興は、平季長の子で、近江守などの地方官を歴任した。娘も平中興女として歌人に名を残している。
初句「世とともに」は、いつまでも、ずっと、の意である。
二句「峰へ麓へ」は、峰へ、また麓へ、の意で、雲の行き来する高い所と低い所を並べ、殿上と地方とを暗に示している。
三句「おりのぼり」は、下ったり上ったり、の意で、雲の動きに、殿上を下り、また昇る身の上を重ねている。
四句「行く雲の身は」は、流れていく雲のような身は、の意で、定まらない境遇を雲にたとえている。
結句「我にぞありける」は、私なのであった、の意で、「ぞ」は強意の係助詞で、連体形「ける」で結ぶ係り結びとなっている。「ける」は気づきの詠嘆を表す。
おりのぼる:雲が峰と麓を下り上りする意と、殿上を下り、また昇る意を重ねる
ぐわいり:地方官。国司
てんじやう:清涼殿の殿上の間。昇殿を許された者が仕える所
- 作者
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平中興
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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春々の数は忘れずありながら 花咲かぬ木を何に植ゑけん
- 次の歌
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事しげししばしは立てれ宵の間に 置けらむ露は出でて払はむ