照る月をまさきの綱に縒りかけて
飽かず別るる人をつながん
- 歌の意味
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照る月の光を、まさきのかずらの綱に縒りかけて、名残惜しいまま別れていく人をつなぎとめたい。
- 鑑賞
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巻第十五 雑歌一 1081
詞書「家に行平朝臣まうで来たりけるに、月のおもしろかりけるに酒らなど賜べて、まかり立たむとしけるほどに」
照る月の光をまさきのかずらで綱に縒って、名残を惜しみつつ帰っていく人をつなぎとめたい、と詠んだ歌である。月の光の筋を綱に見立てるという奇抜な趣向で、客との別れを惜しむ主人の心をもてなしの言葉としている。
詞書によれば、在原行平が融の家を訪れた折、月が美しかったので酒などをふるまい、行平が帰ろうとした時に詠んだ歌である。次歌に行平の返しがあり、本巻の第千七十五首、第千七十六首に続いて行平にかかわる歌が置かれている。
作者の「河原左大臣」は源融である。嵯峨天皇の皇子で、臣籍に下って左大臣に至った。六条河原に陸奥の塩釜を模した河原院を営んだことからこう呼ばれ、小倉百人一首には「陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑに」の歌が採られている。
初句「照る月を」は、照る月を、の意で、月の光そのものを縒る材料に見立てている。
二句「まさきの綱に」は、まさきのかずらで作った綱に、の意で、次歌の四句「まさきのかづら」と応じている。
三句「縒りかけて」は、縒り合わせて掛けて、の意で、月の光の筋を綱に縒り合わせる趣向である。
四句「飽かず別るる」は、名残惜しいまま別れていく、の意で、「飽かず」は満ち足りない気持ちをいう。
結句「人をつながん」は、その人をつなぎとめよう、の意で、「ん」は意志を表す。綱の縁で「つなぐ」と結んでいる。
まさきのかづら:つる草の一種。テイカカズラなどにあてる
よりかく:縒り合わせて掛ける
たうぶ:飲食物を与える
- 作者
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源融
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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事しげししばしは立てれ宵の間に 置けらむ露は出でて払はむ
- 次の歌
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限りなき思ひの綱のなくはこそ まさきのかづら縒りも悩まめ