今日桜雫に我が身いざ濡れむ
香ごめに誘ふ風の来ぬ間に
- 歌の意味
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今日こそ、さあ桜の花の雫に我が身を濡らそう。香りもろとも花を誘い去っていく風が来ないうちに。
- 鑑賞
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巻第二 春歌中 56
詞書「貞観御時、弓の業仕うまつりけるに」
桜の花に置いた雫に我が身を濡らそうと呼びかけ、香りもろとも花を散らす風が吹かないうちに、と花の盛りを惜しんだ歌である。花の雫に濡れるという趣向に、今日の花をこの身に受けとめたいという思いがこもっている。
詞書によれば、清和天皇の貞観年間に、宮中で弓の催しに奉仕した折の歌である。春の賭弓などの晴れの場で、庭の桜を前にして詠まれたものと思われる。
作者の「河原左大臣」は源融である。嵯峨天皇の皇子で、臣籍に下って源の姓を賜り、左大臣に至った。六条河原に壮麗な河原院を営んだことからこう呼ばれる。
初句「今日桜」は、今日という日と目の前の桜を一息に示し、今日の花への思いを強く打ち出している。
二句「雫に我が身」は、桜の花に置いた雫に我が身を、の意である。
三句「いざ濡れむ」の「いざ」は、さあ、と促す語で、「む」は意志を表す。ここで句切れとなる。
四句「香ごめに誘ふ」の「香ごめ」は香りもろともの意で、花を香りごと誘い去っていくことを表す。
結句「風の来ぬ間に」は、風が来ないうちに、の意で、三句に対する倒置である。次歌の第五十七首も「吹き来む風」を詠んでおり、桜と風を取り合わせた歌が続いている。
ゆみのわざ:宮中で行われる弓の儀式や競技
かごめ:香りもろとも
- 作者
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源融
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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桜花にほふともなく春来れば などかなげきの茂りのみする
- 次の歌
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桜花主を忘れぬものならば 吹き来む風に言伝はせよ