結びおきしかたみの子だになかりせば
何にしのぶの草を摘ままし
- 歌の意味
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亡き人が契りを結んで残していった形見の子さえいなかったなら、何によって故人をしのび、しのぶ草を摘んだらよいだろう。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌二 1187
詞書「兼忠朝臣、母身まかりにければ、兼忠をば故枇杷左大臣の家に、娘をば后の宮にさぶらはせむとあひ定めて、二人ながらまづ枇杷の家に渡し送るとて加へて侍りける」
亡き人が残した形見の子さえいなかったなら、何をよすがにしのぶ草を摘もうか、と詠んだ歌である。母を亡くした兼忠と妹を枇杷の家に送り出すにあたり、子どもたちこそ亡き主人をしのぶ唯一のよすがであると、去りゆく子らへの愛惜と故人への哀悼を詠んでいる。
詞書によれば、兼忠の母が亡くなったので、兼忠は故枇杷左大臣藤原仲平の家に、娘は后の宮に仕えさせることに取り決め、二人ともまず枇杷の家に移し送るときに添えた歌である。兼忠朝臣は清和天皇の孫源兼忠とみられ、后の宮は仲平の妹藤原穏子を指すとみられる。
作者は兼忠の母の乳母で、名は伝わらない。
初句「結びおきし」は、契りを結んで残しておいた、の意で、字余りとなっている。亡き母が残していったことをいう。
二句「かたみの子だに」は、形見の子さえ、の意で、「かたみ」に「形見」と、草を摘んで入れる竹かごの「筐」を掛け、「摘む」の縁としている。
三句「なかりせば」は、なかったならば、の意で、「せば〜まし」の反実仮想の形となっている。
四句「何にしのぶの」は、何によってしのぶの、の意で、「しのぶ」に故人を「偲ぶ」意と、「忍ぶ草」を掛けている。
結句「草を摘ままし」は、草を摘んだらよいだろうか、の意で、「まし」は反実仮想の助動詞で、三句の「せば」と呼応している。
かたみ:形見の意と、竹で編んだかごの意の「筐」を掛ける
しのぶ:故人を偲ぶ意と、忍ぶ草を掛ける
しのぶぐさ:シダ植物の一種。ノキシノブ
- 作者
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源兼忠母乳母
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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人につく便りだになし大荒木の 森の下なる草の身なれば
- 次の歌
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うれしきも憂きも心は一つにて 分かれぬものは涙なりけり