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年経れば我が黒髪もしら河の
みづはくむまで老いにけるかな

歌の意味
年を経たので、私の黒髪も白くなり、白河の水を汲むこの身は、みずはぐむほどに年老いてしまったことだ。
鑑賞
巻第十七 雑歌三 1219

詞書「筑紫の白河といふ所に住み侍りけるに、大弐藤原興範の朝臣のまかりわたるついでに、水たべむとてうち寄りて乞ひ侍りければ、水を持て出でて詠み侍りける/かしこに名高く事好む女になん侍りける」
 年を経たので我が黒髪も白くなり、白河の水を汲む身は、みずはぐむほどに老いてしまった、と詠んだ歌である。「白河」の「白」に白髪を、「水は汲む」に老いを表す「瑞歯ぐむ」を掛け、名高い風流人が老いた我が身を機知をこめて詠んでいる。
 詞書によれば、筑紫の白河という所に住んでいた時、大宰大弐の藤原興範が通りかかり、水を飲もうと立ち寄って求めたので、水を持って出て詠んだ歌である。詞書の末尾に、その地で名高い風流を好む女であった、と添えられている。
 作者の「ひかきの嫗」は檜垣嫗である。筑紫に住んだ伝説的な老女で、もとは名高い遊女であったとも伝えられる。
 この話は大和物語にも、檜垣の御と藤原興範の話として見える。

 初句「年経れば」は、年を経たので、の意で、「ば」は原因、理由を表す。
 二句「我が黒髪も」は、私の黒髪も、の意で、三句の「しら」と色の対比をなしている。本巻の第千二百四十首の四句「我が黒髪を」と同じ語である。
 三句「しら河の」の「しら」は、地名の「白河」と、髪の「白」を掛けた掛詞である。
 四句「みづはくむまで」の「みづはくむ」は、「水は汲む」と、年老いて歯が生え変わる「瑞歯ぐむ」を掛けた掛詞で、水を汲むこの身が、それほど老いるまで、の意である。
 結句「老いにけるかな」は、老いてしまったことだ、の意で、「かな」は詠嘆を表す。

しらかは:筑紫の地名の「白河」の意と、髪の「白」を掛ける
みづはぐむ:年老いて歯が生え変わるほど老いる「瑞歯ぐむ」の意と、「水は汲む」を掛ける
だいに:大宰府の次官
作者
檜垣嫗
出典
後撰和歌集
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