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かざすとも立ちと立ちなん無き名をば
ことなし草のかひやなからん

歌の意味
たとえ髪に挿しても、根も葉もない噂は立つだけ立ってしまうだろう。事無し草も、その効き目はないのではなかろうか。
鑑賞
巻第十七 雑歌三 1220

詞書「子息に侍りける女の、男に名立ちて、かかる事なむある、人に言ひさわけと言ひ侍りければ」
 たとえ挿頭にしても、根も葉もない噂は立つだけ立つだろう、事無し草の効き目もないのではないか、と詠んだ歌である。「事無し」の名を持つ草でも噂は防げないと、噂の立った娘の嘆きに応じている。
 詞書によれば、子にあたる女が、男との噂を立てられ、このようなことがあるので人に言い分けてほしいと言ってきたので詠んだ歌である。
 作者の「つらゆき」は紀貫之である。紀望行の子で、古今和歌集の撰者の中心となり、仮名序を書いた。土佐日記の作者としても知られ、小倉百人一首には「人はいさ心も知らずふるさとは」の歌が採られている。

 初句「かざすとも」は、たとえ髪に挿しても、の意で、四句の「ことなし草」を挿頭にすることをいう。
 二句「立ちと立ちなん」は、立つだけ立ってしまうだろう、の意で、同じ動詞を重ねて強めている。
 三句「無き名をば」は、根も葉もない噂は、の意である。本巻の第千二百一首、第千二百二首と同じく、身に覚えのない浮き名を詠んでいる。
 四句「ことなし草の」の「ことなし」は、草の名と、「事無し」を掛けた掛詞である。
 結句「かひやなからん」は、効き目はないのではなかろうか、の意で、「や」は疑問の係助詞で、連体形「なからん」で結ぶ係り結びとなっている。

かざす:草花などを髪や冠に挿す
ことなしぐさ:草の名の意と、「事無し」を掛ける。しのぶ草の異名ともいわれる
しそく:子息、ここは子にあたる娘の意とみられる
作者
紀貫之
出典
後撰和歌集
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