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めづらしき千代の始めの子の日には
まつ今日をこそ引くべかりけれ

歌の意味
めでたく珍しい千代の始めの子の日には、まず今日という日をこそ、松を引くように引き寄せるべきであったのだ。
鑑賞
巻第五 賀歌 289

詞書「康保三年、内裏にて子の日せさせ給ひけるに、殿上の男ども和歌仕うまつりけるに」
 千代の始めとなる子の日には、小松を引くよりも、まず今日という日そのものを引き寄せるべきだと詠む歌である。子の日の小松引きに寄せて「まづ」と「松」とを掛け、めでたい今日の日を長く引き延ばしたいという祝意を表している。詞書によれば、康保三年(966)に村上天皇が内裏で子の日の遊びを催し、殿上の男たちが和歌を詠んだ時の歌である。
 作者の「藤原のふかた」は、平安時代中期の官人と見られるが、伝の詳細は明らかでない。

 初句「めづらしき」は、めでたく珍しい、の意である。
 二句「千代の始めの」は、千年の始まりの、の意である。巻頭の第二百六十三首の「万代の始め」、第二百六十六首の「千代のひつぎの始め」と同じく、長い御代の始まりを祝っている。
 三句「子の日には」は、正月の最初の子の日には、の意で、この日は野に出て小松を引き、長寿を願う行事が行われた。
 四句「まつ今日をこそ」は、まず先に、の意の「まづ」と、子の日に引く「松」とを掛け、係助詞「こそ」で強めている。
 結句「引くべかりけれ」は、引くべきであったのだ、の意で、係助詞「こそ」を受けて已然形「けれ」で結ぶ。次歌の第二百九十首も子の日の松を「引かん」と詠んでいる。

まつ:まず先にの意のまづと、子の日に引く松とを掛ける
ねのひ:正月最初の子の日。野に出て小松を引き、若菜を摘んで長寿を願った
てんじやうびと:清涼殿の殿上の間に昇ることを許された人
作者
藤原のぶかた
出典
拾遺和歌集
前の歌
三千年になるてふ桃の今年より 花咲く春に逢ひにけるかな
次の歌
行く末も子の日の松のためしには 君が千年を引かんとぞ思ふ