亀山にいく薬のみありければ
とどむる方もなき別れかな
- 歌の意味
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亀山には「生く」すなわち命を延ばす薬ばかりがあって、つまりは「行く」薬ばかりなので、引き留める手立てもない別れであることだ。
- 鑑賞
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巻第六 別歌 331
詞書「陸奥守これともがまかり下りけるに、弾正の親王の香薬つかはしけるに」
不老不死の薬があるという亀山には「生く」薬ばかりがあるので、つまりは「行く」薬ばかりで、旅立つ人を引き留める手立てもないと詠む歌である。贈り物の薬にちなんで「生く」と「行く」とを掛け、別れを惜しむ心を機知に包んでいる。詞書によれば、陸奥守これともが任国へ下る時、弾正尹の親王が香薬を贈ったのに添えた歌で、作者が親王に代わって詠んだものと見られる。
作者の「戒秀法師」は、清原元輔の子とされる僧で、清少納言の兄弟にあたる。
初句「亀山に」は、亀の背に乗るとされる仙人の山、蓬莱山をいい、不老不死の薬があるとされた。
二句「いく薬のみ」は、命を延ばす意の「生く」と、旅に「行く」とを掛けている。
三句「ありければ」は、あったので、の意で、已然形に「ば」がついて理由を表す。
四句「とどむる方も」は、引き留める手立ても、の意である。本巻の第三百二十二首の「えやはとどむる」と、別れを引き留められない嘆きを共有している。
結句「なき別れかな」は、ない別れであることだ、の意で、「かな」は詠嘆である。
いく:生きる意の生くと、行く意とを掛ける
かめやま:亀の背に乗るとされる仙人の山。蓬莱山
かうやく:香料と薬
だんじやう:官人の不正を取り締まった弾正台。その長官を親王が務めた
- 作者
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戒秀
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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糸による物ならなくに別れ路は 心細くも思ほゆるかな
- 次の歌
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思ふ人ある方へ行く別れ路を 惜しむ心ぞかつはわりなき