糸による物ならなくに別れ路は
心細くも思ほゆるかな
- 歌の意味
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糸に縒り合わせるものでもないのに、別れの道は、細い糸のように心細く思われることだ。
- 鑑賞
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巻第六 別歌 330
詞書「田舎へまかりける時」
別れ路は糸に縒るものでもないのに、細い糸のように心細く思われると詠む歌である。「縒る」と「心細し」に糸の縁を通わせ、都を離れて地方へ向かう旅立ちの不安を表している。詞書によれば、作者が地方へ下った時の歌である。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。古今和歌集の撰者の中心人物で、仮名序を執筆し、土佐日記を著した。三十六歌仙に数えられる。
この歌は古今和歌集の羇旅歌にも、東へ下る道中で詠んだ紀貫之の歌として入っている。
初句「糸による」は、糸に縒り合わせる、の意である。前々歌の第三百二十八首の「涙の玉」と、玉を貫く糸の縁で響き合っている。
二句「物ならなくに」は、ものではないのに、の意で、「なく」は打消の助動詞「ず」のク語法である。
三句「別れ路は」は、別れて行く道は、の意である。
四句「心細くも」は、心細く、の意で、「細し」は糸の縁語である。
結句「思ほゆるかな」は、思われることだ、の意で、「思ほゆ」は自然にそう思われる意、「かな」は詠嘆である。
よる:糸を縒り合わせる
おもほゆ:自然に思われる
- 作者
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紀貫之
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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惜しむとて止まる事こそかたからめ わが衣手を干してだに行け
- 次の歌
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亀山にいく薬のみありければ とどむる方もなき別れかな