君はよし行く末遠し止まる身の
待つほどいかがあらんとすらん
- 歌の意味
-
あなたはよい、行く末が遠く長いのだから。都にとどまる私の、あなたの帰りを待つ間はどうなろうとしているのだろう。
- 鑑賞
-
巻第六 別歌 334
詞書「返し」
老いの身を嘆いた元輔に対し、あなたはまだ行く末が長いからよいが、都に残って帰りを待つ自分のほうこそどうなるかわからないと返す歌である。相手の老いの嘆きを打ち消して長寿を祝いつつ、残される者の心細さへと話を転じた、思いやりのこもった返歌である。詞書によれば、前歌に対する返しである。
作者の「源満中朝臣」は源満仲である。清和源氏の源経基の子で、鎮守府将軍などを務め、摂津の多田を本拠として多田源氏の祖となった。
初句「君はよし」は、あなたはよい、の意で、ここで句切れとなる。
二句「行く末遠し」は、行く末が遠く長い、の意で、ここで句切れとなる。前歌の「老いて別るる遠き別れ」の「遠し」を受け、道のりの遠さを行く末の長さに転じている。
三句「止まる身の」は、都にとどまる私の、の意である。
四句「待つほどいかが」は、帰りを待つ間はどう、の意である。
結句「あらんとすらん」は、なろうとしているのだろうか、の意で、「らん」は推量の助動詞である。旅立つ者と残る者とを入れ替え、前歌の問いに答えている。
かへし:贈られた歌に答える歌。返歌
- 作者
-
源満仲
- 出典
-
拾遺和歌集
- 前の歌
-
いかばかり思ふらんとか思ふらん 老いて別るる遠き別れを
- 次の歌
-
後れゐてわが恋ひ居れば白雲の たなびく山を今日や越ゆらん