古典和歌stream

限りなき涙の露に結ばれて
人のしもとはなるにやあるらん

歌の意味
限りなく流す涙の露が凍り結んで霜となるように、私は人の下になってしまうのだろうか。
鑑賞
巻第八 雑歌上 503

詞書「二条右大臣、左近の番長佐伯清忠を召して歌詠ませ侍りけるを、望むこと侍りけるが叶ひ侍らざりける頃にて詠み侍りける」
 限りなく流す涙の露が凍り結んで霜となるように、自分は人の下になってしまうのだろうかと詠む歌である。詞書から、二条右大臣に召されて歌を詠んだ折、望んでいたことがかなわなかった頃であったので詠んだ歌とわかる。涙の露が霜となる景に、人に後れを取って下位に留まる我が身を重ね、不遇の嘆きを訴えている。前の歌群の露を受け、ここから本巻の第五百五首まで官途に恵まれない身の嘆きが続く。
 作者の「佐伯清忠」は、詞書によれば左近衛府の番長であったが、伝の詳細は明らかでない。

 初句「限りなき」は、限りのない、の意である。
 二句「涙の露に」は、涙の露が、の意で、前の歌群から続く露を、涙の露として詠んでいる。
 三句「結ばれて」は、凍り結んで、の意で、露が霜に変わる様子をいう。
 四句「人のしもとは」は、人の下にとは、の意である。「しも」は露が結んだ「霜」と、人より下位の意の「下」とを掛けた掛詞である。
 結句「なるにやあるらん」は、なってしまうのだろうか、の意で、八音の字余りである。「や」は疑問の係助詞で、連体形の「らん」で結んでいる。本巻の第四百九十五首の結句と同じ句である。

しも:露が結んだ霜と、人より下位の意の下を掛ける
ばんちやう:番長。近衛府の下級の武官
作者
佐伯清忠
出典
拾遺和歌集
前の歌
惜しからぬ命やさらに延びぬらん 終はりの煙しむる野辺にて
次の歌
憂き世にはゆき隠れなでかき曇り ふるは思ひのほかにもあるかな