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憂き世にはゆき隠れなでかき曇り
ふるは思ひのほかにもあるかな

歌の意味
このつらい世から行き隠れることもできずに、雪が空を曇らせて降るように、心も曇らせて年を経ているのは、思いのほかのことであるよ。
鑑賞
巻第八 雑歌上 504

詞書「加階し侍るべかりける年、えし侍らで、雪の降りけるを見て」
 つらい世から行き隠れることもできずに、心を曇らせて年を経ているのは思いのほかのことだと詠む歌である。詞書から、位階が上がるはずの年にそれがかなわず、雪の降るのを見て詠んだ歌とわかる。「ゆき」に「雪」と「行き」を、「ふる」に「降る」と「経る」を掛け、降りしきる雪の景に、昇進がかなわず世にとどまる身の嘆きを重ねている。前歌の第五百三首の霜に続いて雪を詠み、官途の不遇を嘆く歌が続いている。
 作者の「もとすけ」は清原元輔である。清原深養父の孫で、梨壺の五人の一人として後撰和歌集の撰進と万葉集の訓読に携わった。清少納言の父で、三十六歌仙に数えられる。

 初句「憂き世には」は、このつらい世には、の意である。本巻の第四百八十一首の初句と同じ句で、世を出られない嘆きを共有している。
 二句「ゆき隠れなで」は、行き隠れることもできずに、の意である。「ゆき」は「雪」と「行き」とを掛けた掛詞で、「なで」は打消を表す。
 三句「かき曇り」は、空が曇って、の意で、雪空の様子に心の晴れない様子を重ねている。
 四句「ふるは思ひの」は、年を経ているのは思いの、の意である。「ふる」は雪が「降る」意と、年月を「経る」意を掛けた掛詞である。
 結句「ほかにもあるかな」は、ほかのことであるよ、の意で、「かな」は詠嘆の終助詞である。四句と続けて、思いがけないことであるの意を表している。

ゆき:雪と、行きを掛ける
ふる:雪が降る意と、年月を経る意を掛ける
かかい:加階。位階が上がること
作者
清原元輔
出典
拾遺和歌集
前の歌
限りなき涙の露に結ばれて 人のしもとはなるにやあるらん
次の歌
侘び人は憂き世の中に生けらじと 思ふ事さへかなはざりけり