山ならぬ住処あまたに聞く人の
野臥にとくもなりにけるかな
- 歌の意味
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山ではない住まいをあちこちに持っていると聞いていたあなたが、早くも野臥になってしまったことだ。
- 鑑賞
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巻第九 雑歌下 528
詞書「健守法師、仏名の野臥にてまかり出でて侍りける年、言ひ遣はしける」
山ではない住まいをあちこちに持つと聞いていた健守法師が、早くも野臥になってしまったことだとからかって詠む歌である。詞書から、健守法師が仏名会の折に野臥の役で出ていった年に、経房が言い送った歌とわかる。山にこもる修行僧であるはずが、町にいくつも住まいを持つと噂される法師が、野に臥す役に就いたことを面白がっている。次歌の第五百二十九首の返しと一組の贈答である。
作者の源経房は、左大臣源高明の子で、権中納言に至った。原文では「源経房朝臣」と記されている。
初句「山ならぬ」は、山ではない、の意で、修行の場である山に対して、町中の住まいをいう。前歌の第五百二十七首の二句「山の小寺に」と、山の住まいの語で応じ合っている。
二句「住処あまたに」は、住まいがあちこちにある、の意である。
三句「聞く人の」は、と聞いていた人が、の意で、健守法師を指す。
四句「野臥にとくも」は、野臥に早くも、の意で、「とく」は早く、の意である。次歌の第五百二十九首の初句と二句「山伏も野臥も」に、「野臥」の語が受け継がれている。
結句「なりにけるかな」は、なってしまったことだ、の意で、「に」は完了、「ける」は過去、「かな」は詠嘆を表す。
のぶし:野臥。野に臥して修行する僧。ここでは仏名会での役をいう
ぶつみやう:仏名。仏名会。年末に諸仏の名を唱えて罪を懺悔する法会
すみか:住処。住む所
- 作者
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源経房
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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あしひきの山の小寺に住む人は 我が言ふこともかなはざりけり
- 次の歌
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山伏も野臥もかくて試みつ 今は舎人の閨ぞゆかしき