なき名のみ高雄の山と言ひ立つる
君はあたごの峰にやあるらん
- 歌の意味
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根も葉もない噂ばかりを、高雄の山のように高く言い立てるあなたは、私にとって仇となる愛宕の峰なのだろうか。
- 鑑賞
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巻第九 雑歌下 562
詞書「高雄にまかり通ふ法師に名立ち侍りけるを、少将滋幹が聞きつけて、まことかと言ひ遣はしたりければ」
根も葉もない噂ばかりを高雄の山のように言い立てるあなたは、私にとって仇となる愛宕の峰なのだろうかと返した歌である。詞書から、高雄に通う法師との間に噂が立ったのを、少将藤原滋幹が聞きつけて本当かと言ってよこしたので、それに答えた歌とわかる。京の西北の高雄と愛宕という並び立つ山の名を用い、噂を言い立てる相手を「仇」に掛けた愛宕の峰になぞらえて、軽くやり返している。前の二首の第五百六十首、第五百六十一首の立田山に続き、山の名に噂を重ねる歌である。
作者の「八条のおほいきみ」は八条大君と呼ばれた女性で、伝は詳らかでない。少将滋幹は藤原滋幹で、藤原国経の子である。
初句「なき名のみ」は、根も葉もない噂ばかり、の意で、前歌の第五百六十一首の初句「なき名のみ」と同じ句を共有している。
二句「高雄の山と」は、高雄の山のように、の意で、京の西北の高雄山を詠み、噂を高く言い立てる意を重ねている。
三句「言ひ立つる」は、言い立てる、の意で、前歌の第五百六十一首の二句で「たつ」に掛けた、名が立つ意を受けている。
四句「君はあたごの」は、「あたご」が京の西北の「愛宕」山と「仇」を掛ける掛詞である。高雄と並ぶ愛宕の山の名を用いている。
結句「峰にやあるらん」は、峰なのだろうか、の意で、係助詞「や」を受けて推量の助動詞「らん」の連体形で結ぶ係り結びである。
あたご:京都の「愛宕」山と、「仇」を掛ける
たかを:高雄。京都の西北の山。神護寺がある
なきな:無き名。根拠のない噂
- 作者
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八条大君
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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なき名のみたつたの山の麓には 世にもあらしの風も吹かなん
- 次の歌
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いにしへも登りやしけん吉野山 山より高き齢なる人