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さいばりに衣は染めん雨降れど
移ろひがたし深く染めては

歌の意味
榛の木で衣を染めよう。雨が降っても色は褪せにくい。深く染めたならば。
鑑賞
巻第十 神楽歌 585

 榛の木で衣を染めよう、深く染めれば雨が降っても色は褪せないと詠む歌である。深く染めた衣の色が移ろわないことに、変わらない心を重ねているとも読める。
 本巻は神楽歌の巻で、巻頭から第五百八十六首までは、作者も詞書も記されない、宮中の御神楽で歌われた歌が並ぶ。神楽歌の前張と呼ばれる一群の名は、その一曲「榛」に由来するとする説があり、この歌はその曲に通じるものである。

 初句「さいばりに」は、榛の木で、の意で、榛は木の皮や実を染料とする。
 二句「衣は染めん」は、衣を染めよう、の意で、「ん」は意志の助動詞である。ここで句切れとなる二句切れの歌である。
 三句「雨降れど」は、雨が降っても、の意で、「ど」は逆接の接続助詞である。
 四句「移ろひがたし」は、色が褪せにくい、の意である。
 結句「深く染めては」は、深く染めたならば、の意で、四句の理由を倒置して示している。二句の「染めん」と「染め」の語を繰り返している。

さいばり:榛。はりの木。皮や実を染料とする
うつろふ:移ろふ。色があせる、変わる
出典
拾遺和歌集
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