しなが鳥猪名の伏原飛びわたる
鴫が羽音おもしろきかな
- 歌の意味
-
猪名の伏原を飛び渡っていく鴫の羽音は、なんと趣深いことだろう。
- 鑑賞
-
巻第十 神楽歌 586
猪名の伏原を飛び渡る鴫の羽音が趣深いと詠む歌である。野を渡る鳥の羽音に耳を澄ませ、その心地よさを素直にたたえている。巻頭から続いた作者も詞書も記されない神楽の歌の、最後の一首である。
本巻は神楽歌の巻で、巻頭から第五百八十六首までは、作者も詞書も記されない、宮中の御神楽で歌われた歌が並ぶ。神楽歌の前張の歌に通じるものとされる。
初句「しなが鳥」は、地名の「猪名」にかかる枕詞である。
二句「猪名の伏原」は、摂津国の猪名野の、低く草木の伏す原、の意である。
三句「飛びわたる」は、飛んで渡っていく、の意である。
四句「鴫が羽音」は、鴫の羽音、の意である。
結句「おもしろきかな」は、趣深いことだ、の意で、「かな」は詠嘆を表す終助詞である。
ゐな:猪名。摂津国の地名
しぎ:鴫。水辺にすむ鳥
はおと:羽音。鳥が羽ばたく音
- 出典
-
拾遺和歌集
- 前の歌
-
さいばりに衣は染めん雨降れど 移ろひがたし深く染めては
- 次の歌
-
住吉のきしもせざらんものゆゑに ねたくや人にまつと言はれむ