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長からじと思ふ心は水の泡に
よそふる人の頼まれぬかな

歌の意味
長くは続くまいと私が思う心は、恋心を水の泡になぞらえるようなあなたが、頼りにならないと思われるからなのだ。
鑑賞
巻第十一 恋歌一 637

詞書「返し」
 思いを水の泡になぞらえるような人は頼りにできず、その恋も長くは続くまいと思うと切り返す歌である。詞書から、前歌の第六百三十六首への返しとわかる。前歌の「みづの泡」を逆手に取り、はかなく消える泡にたとえる恋なら長続きしないだろうと、相手の言葉を退けている。
 作者の「堤中納言の御息所」は藤原桑子である。堤中納言と呼ばれた藤原兼輔の娘で、醍醐天皇の更衣となり、章明親王を生んだ。

 初句「長からじと」は、長くは続くまいと、の意で、「じ」は打消推量の助動詞である。六音の字余りの句である。
 二句「思ふ心は」は、私が思う心は、の意である。
 三句「水の泡に」は、水の泡に、の意で、前歌の第六百三十六首の三句「みづの泡の」を受けている。
 四句「よそふる人の」は、なぞらえる人が、の意で、前歌の作者を指している。
 結句「頼まれぬかな」は、頼りにできないことだ、の意で、「れ」は可能の助動詞「る」の未然形、「ぬ」は打消の助動詞「ず」の連体形、「かな」は詠嘆を表す。

よそふ:寄そふ。なぞらえる、たとえる
たのむ:頼む。頼りにする、あてにする
作者
藤原桑子
出典
拾遺和歌集
前の歌
あな恋しはつかに人をみづの泡の 消えかへるとも知らせてしがな
次の歌
湊出づる海人の小舟の碇縄 くるしきものと恋を知りぬる