木の間より散り来る花を梓弓
えやはとどめぬ春の形見に
- 歌の意味
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木の間から散ってくる花を、梓弓を引くように、引き留められないことがあろうか。春の形見として。
- 鑑賞
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巻第十六 雑春歌 1062
詞書「亭子院、京極の御息所に渡らせ給うて、弓御覧じて賭け物出ださせ給ひけるに、髭籠に花をこき入れて、桜を鳥座にして、山菅を鶯に結び据ゑて、かく書きてくはせたりける」
木の間から散ってくる花を、梓弓を引くように、春の形見として引き留められないことがあろうかと詠む歌である。詞書から、宇多法皇が京極御息所のもとを訪れて弓の催しを御覧になり、賭け物を出された折、髭籠に花をしごき入れ、桜の枝を鳥のとまり木にし、山菅を鶯の形に結んで据え、この歌を書き添えたとわかる。弓の催しにちなんで梓弓を詠み込み、散る花を籠に留めた賭け物を、去りゆく春の形見として差し出している。
作者の「一条のきみ」は、一条の君と呼ばれた女房で、伝は詳らかでない。
初句「木の間より」は、木々の間から、の意である。
二句「散り来る花を」は、散ってくる花を、の意で、詞書の髭籠にしごき入れた花をいう。
三句「梓弓」は、梓の木で作った弓で、詞書の弓の催しにちなんで置かれ、弓を「引く」ように花を引き留めることを響かせている。本巻の第千二十九首の三句「梓弓」と同じ語である。
四句「えやはとどめぬ」は、留めることができないだろうか、いや留めよう、の意で、「え〜ぬ」は不可能を表し、「やは」は反語を表す。
結句「春の形見に」は、春の形見として、の意で、四句の目的を倒置して示している。
かたみ:形見。思い出のよすがとなるもの
ひげこ:髭籠。竹を編んで端を髭のように残した籠
とくら:鳥座。鳥のとまり木
やますげ:山菅。山に生える菅の類
- 作者
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一条の君
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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簗見れば川風いたく吹く時ぞ 波の花さへ落ちまさりける
- 次の歌
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春過ぎて散りはてにける梅の花 ただかばかりぞ枝に残れる