春過ぎて散りはてにける梅の花
ただかばかりぞ枝に残れる
- 歌の意味
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春が過ぎて散り果ててしまった梅の花は、ただこれほど、香りばかりが枝に残っている。
- 鑑賞
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巻第十六 雑春歌 1063
詞書「比叡の山に住み侍りけるころ、人の薫物を乞ひて侍りければ、侍りけるままに、少しを梅の花のわづかに散り残りて侍る枝につけて遣はしける」
春が過ぎて散り果てた梅の花は、ただこれほど、香りばかりが枝に残っていると詠む歌である。詞書から、比叡山に住んでいた頃、人に薫物を求められたので、手元にあった少しを、わずかに花の散り残った梅の枝につけて送った歌とわかる。「香ばかり」と、これほどの意の「かばかり」を掛け、わずかな薫物を、散り残った梅の香に見立てて謙遜しつつ贈っている。
作者の如覚法師は、藤原師輔の子の藤原高光である。右近衛少将であったが、比叡山で出家し、のちに多武峰に移った。三十六歌仙に数えられる。
初句「春過ぎて」は、春が過ぎて、の意である。
二句「散りはてにける」は、すっかり散ってしまった、の意で、「に」は完了、「ける」は過去の助動詞「けり」の連体形である。
三句「梅の花」は、梅の花の、の意で、本巻の第千五首から第千十四首まで続いた梅の歌と、散り果てた梅として呼応している。
四句「ただかばかりぞ」は、ただこれほど、香りばかりが、の意で、「かばかり」は「香ばかり」と、これほどの意の「かばかり」を掛ける掛詞である。係助詞「ぞ」は結句の連体形「る」で結ぶ係り結びである。
結句「枝に残れる」は、枝に残っている、の意で、「る」は存続の助動詞「り」の連体形である。
かばかり:「香ばかり」と、これほどの意の「かばかり」を掛ける
たきもの:薫物。香料を練り合わせた香
ちりはつ:散り果つ。すっかり散ってしまう
- 作者
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藤原高光
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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木の間より散り来る花を梓弓 えやはとどめぬ春の形見に
- 次の歌
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谷の戸を閉ぢやはてつる鶯の 待つに音せで春も過ぎぬる