しばしだに陰に隠れぬ時は猶
うなだれぬべきなでしこの花
- 歌の意味
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ほんのしばらくでも陰に隠れていない時は、やはりうなだれてしまうにちがいない撫子の花、そのように慈しまれてきた子の私は、母の庇護がないとしおれてしまいそうだ。
- 鑑賞
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巻第十六 雑春歌 1080
詞書「一条摂政の北の方ほかに侍りけるころ、女御と申しける時」
しばらくでも陰に隠れていないと、うなだれてしまうにちがいない撫子の花であると詠む歌である。詞書から、作者がまだ女御と呼ばれていた頃、母である一条摂政藤原伊尹の北の方がよそに出かけていた折の歌とわかる。日の照りつける中でしおれる撫子に、母の庇護を離れて心細い我が身を重ね、「撫子」と「撫でし子」を掛けて、母を慕う思いを伝えている。
作者の「贈皇后宮」は藤原懐子とみられる。一条摂政藤原伊尹の娘で、冷泉天皇の女御となり、花山天皇を生んだ。死後に后位を追贈された。
初句「しばしだに」は、ほんのしばらくでも、の意で、「だに」は最小限の限定を表す。
二句「陰に隠れぬ」は、陰に隠れていない、の意で、「陰」は日陰と、母の庇護とを重ねている。「ぬ」は打消の助動詞「ず」の連体形である。
三句「時は猶」は、時はやはり、の意である。
四句「うなだれぬべき」は、うなだれてしまうにちがいない、の意で、「ぬ」は完了の助動詞、「べき」は推量の助動詞「べし」の連体形である。
結句「なでしこの花」は、「なでしこ」が花の「撫子」と、撫でて慈しんだ子の意の「撫でし子」を掛ける掛詞である。体言止めで結び、前歌の第千七十九首の「常夏」と同じ花を詠んでいる。
なでしこ:花の「撫子」と、撫でて慈しんだ子の意の「撫でし子」を掛ける
かげ:陰。日陰、また庇護
きたのかた:北の方。貴人の正妻
- 作者
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藤原懐子
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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常夏の花をし見ればうちはへて 過ぐる月日の数も知られず
- 次の歌
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いたづらに老いぬべらなり大荒木の 森の下なる草葉ならねど