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秋萩の下葉につけて目に近く
よそなる人の心をぞ見る

歌の意味
色づいた秋萩の下葉にことよせて、目には近くにいながら疎遠なあなたの心のほどを見ることだ。
鑑賞
巻第十七 雑秋歌 1116

詞書「近隣なる所に方違へに渡りて、宿れりと聞きてあるほどに、事に触れて見聞くに、歌詠むべき人なりと聞きて、これが歌詠まんさまいかでよく見むと思へども、いとも心にしあらねば深くも思はず、進みても言はぬほどに、かれもまた試みむと思ひければ、萩の葉の紅葉ちたるにつけて、歌をなむおこせたる」
 色づいた秋萩の下葉にことよせて、すぐ近くにいながら疎遠なあなたの心のほどを見ることだと詠む歌である。詞書から、すぐ近くの家に方違えのために来て泊まっている女がおり、歌を詠む人だと聞いて、その歌の詠みぶりを見たいと思いながらも、それほど気にとめず、自分から言い出さずにいたところ、女のほうも試してみようと思ったのか、紅葉した萩の葉に結びつけて歌を送ってきたとわかる。下葉から色づく萩を、近くにいながら打ち解けない相手の心になぞらえ、相手の歌の力を試している。
 次歌の第千百十七首は、この歌への紀貫之の返歌である。
 作者は詞書に「女」とあるのみで、名は伝わらない。

 初句「秋萩の」は、秋萩の、の意で、前歌の第千百十五首の三句「萩の花」から萩の歌が続いている。
 二句「下葉につけて」は、下葉に結びつけて、またことよせて、の意である。本巻の第千百十八首、第千百十九首の四句「萩の下葉は」と同じ萩の下葉を詠んでいる。
 三句「目に近く」は、目には近くに、の意で、方違えで近くの家に泊まっていることをいう。
 四句「よそなる人の」は、疎遠な人の、の意で、三句の「目に近く」と、近さと遠さで対をなしている。
 結句「心をぞ見る」は、心を見ることだ、の意で、係助詞「ぞ」を受けて連体形「見る」で結ぶ係り結びである。次歌の第千百十七首の結句「見えじとぞ思ふ」と、「見る」と「見えじ」で応じ合っている。

かたたがへ:方違へ。陰陽道で、凶とされる方角を避けて、前夜に別の所に泊まること
したば:下葉。草木の下の方の葉
よそ:関係の薄いこと、疎遠であること
出典
拾遺和歌集
前の歌
秋霧のたなびく小野の萩の花 今や散るらんいまだ飽かなくに
次の歌
世の中の人に心を染めしかば 草葉に色も見えじとぞ思ふ