世の中の人に心を染めしかば
草葉に色も見えじとぞ思ふ
- 歌の意味
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世の中の人々に心を寄せて染めてしまったので、草葉の色づきにことよせても、私の心の色は見えはしないだろうと思う。
- 鑑賞
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巻第十七 雑秋歌 1117
詞書「返し」
世の中の人々に心を寄せてしまっているので、草葉の色づきにことよせても、私の心の色は見えないだろうと答える歌である。前歌の第千百十六首への返歌で、萩の下葉の色づきに相手の心を見ると詠みかけられたのに対し、心はすでに世の人に染めているので、草葉には色も見えまいと、さらりと受け流している。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。古今和歌集の撰者の中心人物で、仮名序を執筆し、土佐日記を著した。三十六歌仙に数えられる。
初句「世の中の」は、世の中の、の意である。
二句「人に心を」は、人々に心を、の意である。
三句「染めしかば」は、染めてしまったので、の意で、「心を染む」は深く思いを寄せる意であり、四句の「色」と縁語をなす。「しか」は過去の助動詞「き」の已然形である。
四句「草葉に色も」は、草葉に心の色も、の意で、前歌の第千百十六首の「秋萩の下葉」を受けている。
結句「見えじとぞ思ふ」は、見えないだろうと思う、の意で、「じ」は打消推量の助動詞、係助詞「ぞ」を受けて連体形「思ふ」で結ぶ係り結びである。前歌の結句「心をぞ見る」に「見えじ」と応じている。
そむ:染む。色に染める。「心を染む」で、深く思いを寄せる意
- 作者
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紀貫之
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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秋萩の下葉につけて目に近く よそなる人の心をぞ見る
- 次の歌
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このころの暁露に我が宿の 萩の下葉は色づきにけり