惜しからでかなしきものは身なりけり
憂き世背かん方を知らねば
- 歌の意味
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惜しくもないのに、いとおしく悲しいものは我が身であったよ。つらい世を背いて逃れる方法を知らないので。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌二 1189
詞書「世の中の心にかなはぬ事申しけるついでに」
惜しくもないのに悲しいものは我が身であった、憂き世を背く方法を知らないので、と詠んだ歌である。思うにまかせない世を捨てたいと思いながら、出家する道もわからず、捨てきれない我が身をもてあます嘆きを述べている。
詞書によれば、世の中が思うようにならないことを話したついでに詠んだ歌である。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。紀望行の子で、古今和歌集の撰者の中心となり、仮名序を書いた。土佐日記の作者としても知られる。
初句「惜しからで」は、惜しくもなくて、の意で、「で」は打消の接続助詞である。
二句「かなしきものは」は、悲しいものは、の意で、いとおしさと悲しさの両方をこめている。
三句「身なりけり」は、我が身であったよ、の意で、「けり」は気づきの詠嘆を表す。ここで句切れとなる。
四句「憂き世背かん」は、つらい世を背こうとする、の意で、出家して俗世を離れることをいう。
結句「方を知らねば」は、方法を知らないので、の意で、三句の理由を後から添える倒置となっている。次歌の結句「果てを知らねば」と同じ形で、二首の結びが響き合っている。
そむく:世を背く。出家する
かた:方法。手段
- 作者
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紀貫之
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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うれしきも憂きも心は一つにて 分かれぬものは涙なりけり
- 次の歌
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思ひ出づる時ぞかなしき世の中は 空行く雲の果てを知らねば