いかで猶網代の氷魚に言問はむ
何によりてか我を訪はぬと
- 歌の意味
-
なんとかしてやはり網代の氷魚に尋ねてみたい。網代に寄るお前のせいで、いったい何によって、あの人は私を訪ねてくれないのかと。
- 鑑賞
-
巻第十七 雑秋歌 1134
詞書「蔵人所に候ひける人の、氷魚の使にまかりにけるとて、京に侍りながら、音もし侍らざりければ」
なんとかして網代の氷魚に、いったい何によってあの人は私を訪ねてくれないのかと尋ねてみたいと詠む歌である。詞書から、蔵人所に仕えていた男が、氷魚の使に出かけたと言いながら、実は京にいるのに便りもよこさなかったので詠んだ歌とわかる。氷魚の使を口実に訪れない男を、網代の氷魚に問いかける形で、皮肉を込めて恨んでいる。
作者の修理は、女房名で呼ばれた女性で、詳しい伝は明らかでない。
初句「いかで猶」は、なんとかしてやはり、の意で、本巻の第千百三十七首の三句「いかで猶」と同じ句を共有している。
二句「網代の氷魚に」は、網代の氷魚に、の意で、前歌の第千百三十三首の四句「網代に氷魚の」と同じ語を共有している。
三句「言問はむ」は、尋ねてみたい、の意で、「む」は意志の助動詞である。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
四句「何によりてか」は、「より」が氷魚が網代に「寄り」と、原因の「因り」を掛ける掛詞で、何によって、の意となる。「か」は疑問の係助詞である。前歌の第千百三十三首の結句「よるも見えけり」と、「よる」の語で通じている。
結句「我を訪はぬと」は、私を訪ねないのかと、の意で、打消の助動詞「ず」の連体形「ぬ」が四句の「か」を受けて結んでいる。
ひをのつかひ:氷魚の使。網代で捕れた氷魚を受け取りに遣わされた朝廷の使
よる:氷魚が網代に「寄る」意と、原因を表す「因る」意を掛ける
こととふ:言問ふ。尋ねる、問いかける
- 作者
-
修理
- 出典
-
拾遺和歌集
- 前の歌
-
月影の田上川に清ければ 網代に氷魚のよるも見えけり
- 次の歌
-
祝子が斎ふ社の紅葉葉も 標をば越えて散るといふものを