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わたつみも雪げの水はまさりけり
をちの島々見えずなりゆく

歌の意味
海でも、雪解けの水は増えるものだったのだなあ。遠くの島々が、次第に見えなくなってゆく。
鑑賞
巻第十七 雑秋歌 1152

詞書「雪を島々の形に作りて見侍りけるに、やうやう消え侍りければ」
 海でも雪解けの水は増すものだったのだ、遠くの島々が次第に見えなくなってゆくと詠む歌である。詞書から、雪を島々の形に作って眺めていたところ、次第に溶けて消えていったので詠んだ歌とわかる。溶けてゆく雪の島を、雪解け水で海が満ち、遠くの島々が沈んでゆくさまに見立てて興じている。
 次歌の第千百五十三首も同じ折の歌である。
 作者の「中務のみこ」は、中務卿を務めた親王をいう呼称である。中務卿には兼明親王や具平親王が任じられており、誰を指すかについて定説を見ない。

 初句「わたつみも」は、海でも、の意である。
 二句「雪げの水は」は、雪解けの水は、の意である。
 三句「まさりけり」は、増すものだったのだ、の意で、「けり」は気づきの詠嘆を表す。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
 四句「をちの島々」は、遠くの島々、の意で、雪で作った島々をいう。
 結句「見えずなりゆく」は、見えなくなってゆく、の意である。

わたつみ:海。もとは海の神をいう
ゆきげ:雪消。雪がとけること。また、雪どけの水
をち:遠方。遠く
作者
中務のみこ
出典
拾遺和歌集
前の歌
独り寝は苦しきものと懲りよとや 旅なる夜しも雪の降るらん
次の歌
元結に降り添ふ雪の雫には 枕の下に浪ぞ立ちける