- 歌の意味
-
元結に降りかかる雪の雫によって、枕の下には波が立つことだ。
- 鑑賞
-
巻第十七 雑秋歌 1153
詞書は前の歌に続き「雪を島々の形に作りて見侍りけるに、やうやう消え侍りければ」
元結に降りかかる雪の雫によって、枕の下に波が立つと詠む歌である。詞書は前歌の第千百五十二首と同じで、雪で作った島々が次第に消えていった折の歌である。前歌の海の見立てを受けて雪どけの雫から波を導き、元結に降りかかる雪に白髪を、雫に涙を重ねて、老いを嘆く心を詠んだものと解される。
作者の「中務のみこ」は、中務卿を務めた親王をいう呼称である。中務卿には兼明親王や具平親王が任じられており、誰を指すかについて定説を見ない。
初句「元結に」は、髪を束ねる元結に、の意である。
二句「降り添ふ雪の」は、降りかかって加わる雪の、の意で、白髪の増すさまを思わせる。巻末の第千百五十八首の「我が黒髪に」「降れる白雪」と、髪に降る雪を詠む点で通じている。
三句「雫には」は、雪どけの雫によって、の意である。
四句「枕の下に」は、枕の下に、の意で、涙に濡れる寝床を思わせる。
結句「浪ぞ立ちける」は、波が立つことだ、の意で、係助詞「ぞ」を受けて連体形「ける」で結ぶ係り結びである。前歌の第千百五十二首の「わたつみ」の見立てを受けている。
もとゆひ:元結。髪の髻を結び束ねる紐
しづく:雫。したたり落ちる水の粒
- 作者
-
中務のみこ
- 出典
-
拾遺和歌集
- 前の歌
-
わたつみも雪げの水はまさりけり をちの島々見えずなりゆく
- 次の歌
-
さわらびや下にもゆらん霜枯れの 野原の煙春めきにけり