宮造る飛騨の匠の手斧音
ほとほとしかる目をも見しかな
- 歌の意味
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宮殿を造る飛騨の匠の手斧の音がほとほとと響くように、ほとほと危うい目にもあったことだ。
- 鑑賞
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巻第十九 雑恋 1226
詞書「さだもりが住み侍りける女に、くにもちが忍びて通ひ侍りけるほどに、さだもりまうで来ければ、惑ひて塗籠に隠して、後ろの戸より逃がし侍りけるつとめて、言ひ遣はしける」
宮殿を造る飛騨の匠の手斧の音がほとほとと響くように、ほとほと危うい目にあったと詠む歌である。詞書から、さだもりの通う女のもとにくにもちが忍んで通っていたところ、さだもりがやって来たので、女があわてて塗籠に隠し、後ろの戸から逃がしたその翌朝に送った歌とわかる。手斧で木を削る音の「ほとほと」に、危うく の意の「ほとほと」を掛け、間一髪で逃れた冷や汗の思いを、おかしみを交えて詠んでいる。
作者のくにもちは、伝の詳らかでない人物である。詞書のさだもりも同様である。
初句「宮造る」は、宮殿を造る、の意である。
二句「飛騨の匠の」は、飛騨国から都へ出て宮殿の造営に携わった大工の、の意で、飛騨の匠は腕のよい大工として知られた。
三句「手斧音」は、手斧で木を削る音、の意で、ここまでが四句の「ほとほと」を導く序詞である。
四句「ほとほとしかる」は、手斧の音の「ほとほと」と、危うく の意の「ほとほと」を掛ける掛詞である。危うい、の意となる。
結句「目をも見しかな」は、目にもあったことだ、の意で、「し」は過去の助動詞「き」の連体形、「かな」は詠嘆を表す。
ほとほと:手斧で木を削る音の「ほとほと」と、危うく の意の「ほとほと」を掛ける
てをの:手斧。木を削る斧
たくみ:匠。大工
ぬりごめ:塗籠。周囲を壁で塗り込めた部屋
つとめて:翌朝
- 作者
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くにもち
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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忍びつつ夜こそきしか唐衣 ひとや見むとは思はざりしを
- 次の歌
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ありとても幾世かは経る唐国の 虎伏す野辺に身をも投げてん