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逢ふ事のかくてやつひにやみの夜の
思ひも出でぬ人のためには

歌の意味
逢うことは、こうしてとうとう止んでしまい、闇の夜のようになってしまうのだろうか。私のことを思い出しもしない人にとっては。
鑑賞
巻第十九 雑恋 1255

詞書「日蝕の時、太皇太后宮より一品の宮のもとに遣はしける」
 逢うことはこうしてとうとう止み、闇の夜のようになってしまうのだろうか、思い出しもしない人にとってはと詠む歌である。詞書から、日蝕のあった時に、太皇太后宮から一品の宮のもとに送った歌とわかる。日が欠けて闇となる日蝕に事寄せ、「止み」に「闇」を掛けて、久しく会うこともなく、自分を思い出してもくれない相手への恨めしさと寂しさを伝えている。
 作者の「太皇太后宮」は、誰を指すかについて定説を見ない。この呼称は、天皇の祖母にあたる位の后である太皇太后の敬称である。詞書の一品の宮も、誰を指すかは明らかでない。

 初句「逢ふ事の」は、会うことが、の意である。
 二句「かくてやつひに」は、こうしてとうとう、の意で、係助詞「や」は疑問を表す。
 三句「やみの夜の」は、「やみ」が会うことが「止み」と、日蝕の「闇」を掛ける掛詞である。闇の夜のように、の意となる。
 四句「思ひも出でぬ」は、思い出しもしない、の意で、日蝕で日が出ない闇のさまに、相手が自分を思い出さないことを重ねている。
 結句「人のためには」は、その人にとっては、の意で、自分を忘れた相手をいう。三句までの嘆きの理由を倒置して示している。

やみ:会うことが「止み」と、「闇」を掛ける
いつぽんのみや:一品の宮。一品の位を受けた皇子、皇女
作者
太皇太后宮
出典
拾遺和歌集
前の歌
世とともに雨降る宿の庭たづみ すまぬにかげは見ゆるものかは
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岩代の野中に立てる結び松 心も解けず昔思へば