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岩代の野中に立てる結び松
心も解けず昔思へば

歌の意味
岩代の野の中に立っている結び松のように、私の心も結ぼれて解けない。昔のことを思うと。
鑑賞
巻第十九 雑恋 1256

詞書「題しらず」
 岩代の野中に立つ結び松のように、昔を思うと心も結ぼれて解けないと詠む歌である。旅の無事を祈って枝を結んだ結び松の、いつまでも解けない結び目に、昔を思い出して晴れることのない心を重ねている。結び松の「結び」と、心が「解けず」とが呼応している。
 作者の「人まろ」は柿本人麻呂である。持統天皇、文武天皇の時代に仕えた宮廷歌人で、歌聖と称される。三十六歌仙に数えられる。
 万葉集の巻二に、長忌寸意吉麻呂が有間皇子の結び松を見て詠んだ歌として、結句を「古思ほゆ」とする類歌が見える。

 初句「岩代の」は、紀伊国の岩代の、の意で、結び松で知られる地である。
 二句「野中に立てる」は、野の中に立っている、の意で、「る」は存続の助動詞「り」の連体形である。
 三句「結び松」は、枝を結んで願いをかけた松、の意で、ここまでが四句の「解けず」を導いている。
 四句「心も解けず」は、心も晴れない、の意で、結び松の結び目が解けないことと、心が結ぼれて晴れないことを重ねている。ここで句切れとなる四句切れの歌である。
 結句「昔思へば」は、昔のことを思うと、の意で、「ば」は已然形について原因を表す。四句の理由を倒置して示している。

むすびまつ:結び松。松の枝を結んで、旅の無事や願いを祈ったもの
いはしろ:岩代。紀伊国の地名
作者
柿本人麻呂
出典
拾遺和歌集
前の歌
逢ふ事のかくてやつひにやみの夜の 思ひも出でぬ人のためには
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今日かとも明日とも知らぬ白菊の 知らず幾世を経べき我が身ぞ